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【読書】躯(からだ)

短編小説で面白そうなのを探していたときに
とあるユーチューバーさんがこの本を紹介していたので読んでみました。

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乃南アサ
『躯(からだ)
(表紙の字に変換できません・・・)
です。

 

この記事は本の内容に触れます。

また、記事中の意見等はブログ管理者の個人的なものです。

ご了承ください。

 

中身は

・臍(へそ)

・血流

・つむじ

・尻

・顎

と、

それぞれ体にまつわるタイトル5編からなる短編集です。

 

日常が一瞬にして非日常に激変する「怖さ」を描いたホラー短篇集。お臍の美容整形を娘にせがまれたのがきっかけで、自分の顔をいじりまくる母親。女性の丸い膝小僧を愛撫したくてたまらない、中年サラリーマン。薄毛に悩み、怪しい発毛剤に手を出す青年。「アヒルのようなお尻」と揶揄され“吐きもどし”がやめられなくなる女子高生。顎を殴ることに魅入られた、中卒のひ弱なプータロー。それぞれの欲望の果てに、躯が静かな復讐を始める──。 

Amazonの内容紹介 より抜粋

 

収録作品の中から最初の作品、『臍』を紹介。

以下、完全なネタバレがあります。  

知りたくない方は見ないでください。

自己責任にてお願いします。
 

 

話は以下のような6つのセクションになっています。

 

[1]
主婦の愛子は、女子高生の次女、未菜子から丸い臍を縦長に整形したいと言われる。
最初は反対する愛子だったが、未菜子から、売春で稼いだ金で親に内緒で美容整形を受けた友人の話しや、姉の千春が親に不信感を持ち距離を取るようになった話しで脅されたため、最後には根負けして、美奈子が見つけてきた雑誌広告の美容外科に連絡する。

 

[2]
愛子は、未菜子に付き添い、カウンセリングのために美容外科へ向かう。
そこで医師から「お臍っていうのは、身体のど真ん中にあって、すごく大切みたいに言われてますがね、本当は、別になくていいものなんです」などと言われる。
未菜子の手術の話は着々と進むが、愛子まで目尻の皺取り手術を薦められる。


[3]
未菜子の手術中、愛子は院長から、目尻の皺取りだけでは不自然になるから、と顔全体の手術を勧められる。
しかし、手術代を支払うには、へそくりの定期預金を一つ解約する必要があった。
院長から、手術をすれば、夫どころか他の男性からも認められるに違いない、と言われ、愛子の中には若返った自分の姿ばかりが思い浮かんでくるようになる。

 

[4]
夫の出張のタイミングに合わせて手術をすることにした愛子。
長女、千春とのコミュニケーションも復活し、二人の娘にも応援されるようになる。
包帯とガーゼが取り払われると、頬がすっきりと引き締まり、全身まで若返った気分になる愛子。
夫の驚いた顔を見るのを楽しみにする愛子だったが、出張から帰ってきた夫は全く気づかず、しまいには「少し、太ったな」などと言う始末。
愛子は、腹の底から沸々と怒りがたぎってくるのを感じる。

 

[5]
愛子は瞼のたるみを取る手術も受けるが、それでも夫だけが気がつかない。
愛子はほとんど挑戦的な気持ちになり、顎の脂肪を取る手術も受ける。
そんなある日、今度は長女の千春が、就職のために自分も整形をしたいと言い出す。
愛子は、自分が何度も美容整形を受けている手前、駄目とは言えず、千春にも受けさせ、愛子はへそくりを使い果たす。
めずらしく休日に夫が家でずっと一緒だったが、それでも愛子の変化に気づかない。
愛子は、医師の言っていた言葉を思い出す。
『お臍っていうのは、身体のど真ん中にあって、すごく大切みたいに言われてますがね、本当は、別になくていいものなんです』
愛子は、たかが臍ごときに気を遣う必要などありはしない、と腹の中で夫を軽蔑し初めて夫を愚か者だと思う。

 

[6]
夫は、酔ってめずらしく早く帰ってくるが、玄関で初めて弱音のようなものを吐いて項垂れると、別人のように若返っている妻、下着のような服で臍を出している次女、目元も涼しく鼻筋の通っている長女ら3人を見て、「お客さんか。どなた」などと言う。
更に「女房を、呼んでもらえませんか」と言われ、何と答えたら良いか分からないまま、ただ夫を見つめる愛子。
数分後、夫は深いいびきをかき始め、三人に囲まれたまま二度と目覚めることがなかった。

 

こんな感じのお話しでした。

 

最後の『二度と目覚めることがなかった。』とは、
どういう意味? 
何故?・・・
と、色々想像しちゃいます。

 

自分がこれまで読んだのがたまたまなのか分かりませんが、女性の書く短編小説は、シニカルな面白さが強いような気がします。
対して男性の短編小説はロジカルな面白さの部分が強いような・・・。

読了後、内容はぜんぜん違うのですが、向田邦子の『かわうそ』を思い出しました。

夫婦のシニカルな話だからかな・・・

 

細かいことを言えば、突然ゴルフに行かない日があったりするのはまぁいいとして、
突然、『めずらしく酔って帰ってくる』というところが、
ラストに向けてちょっと都合いいかな、と・・・。
まぁ、短編ってラストで一気に畳み込む、というところが面白さでもあるのでね、
特にホラーだし・・・気にしない気にしない・・・。

 
 
以前は短編って、あまり読むことがなかったんですが、現代の情報の速さと多さのせいか、最近は、さっと読めて楽しめる短編を求めがちになりました。
では、また。
 
 
 絶版のようで、Kindleなど電子版しかないっぽいです。
躯(からだ) (文春文庫)

躯(からだ) (文春文庫)

 

 

 かわうそ』はこちらの短編集に。向田邦子は、シニカルな人間模様を描くのが上手い。

思い出トランプ (新潮文庫)

思い出トランプ (新潮文庫)

  • 作者:向田 邦子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1983/05
  • メディア: 文庫